手形の裏書・取立について

手形の裏書とは

 手形は支払期日まで待っていて支払を受けるほか、それまでに銀行で割り引いたり、他の債務の支払のために他人に譲渡したりします。この手形の譲渡というのは「手形上の権利を他人に譲り渡す」ことですが、その方法として「裏書」が行われます。

 たとえば、AがBに対して有する一般の債権をCに譲渡する場合、AからBに配達証明付内容証明郵便で譲渡通知を出すか、Bからの譲渡承諾書に確定日付の押捺を受けておくか、いずれかの方法をとらなければなりません。

 一方、A振出人→B受取人の手形を、BがCに譲渡する場合には、(1)BとCとの間で譲渡の合意をする。(2)Bが手形の裏書欄に裏書をする。(3)BがCに手形を交付する。という3段階を踏むことになり、実際の手続としてはBは手形に裏書をした上でCに手形を交付すれば済むわけです。

 同じ債権でも、手形の法が譲渡の手続が簡単です。

 裏書は、手形の裏面に「表記金額を下記被裏書人またはその指図人へお支払下さい。」という裏書文句と被裏書人(譲渡する相手方)の名前を書き、裏書人(譲渡する人)が署名・捺印あるいは記名・捺印して、その手形を被裏書人に渡せばいいわけです。
 現在使われている統一手形用紙には、裏書欄や裏書文句は印刷されていますので、それ以外の所定の欄に記入するだけです。

(1)裏書文句の条件づけはできない。
 裏書文句に条件をつけることはできません。条件を付けも条件の無いものとみなされます。条件をつけることにより裏書自体が無効になることはありません。

(2)一部裏書をする裏書は無効になる。
 手形金額の一部だけを譲渡する一部裏書は認められません。一部裏書は条件づけの場合と異なり、裏書そのものが無効になります。

(3)裏書の日付、裏書人の住所はなくても有効。
 裏書欄には日付を記入する部分がありますが、記入がなくても裏書は有効です。裏書人の住所の記載がなくても裏書は有効ですが、住所の記載が無いと手形が不渡りになったときに、不渡りの通知が受けられません。

(4)裏書欄がいっぱいになったとき。
 手形の裏書欄がいっぱいになったときは、補箋(ほせん)をつけて、それに裏書をします。補箋はどのような紙でもよいのですが、一般には同じ大きさの手形用紙などを使います。貼り付けた人が割印をします。割印がなくても補箋にした裏書が無効になることはありません。

(5)白地式裏書(被裏書人の記入を省略する裏書)
 被裏書人欄に受取人の氏名を書かずに裏書することです。この裏書の場合、手形の所持人が手形の権利者となります。白地式裏書によって手形を取得した人が、さらに手形を次の人に譲渡するときには、裏書きして渡してもよいし、また裏書をしないでそのまま引き渡してもかまいません。

裏書の効力

1. 権利移転的効力

 約束手形の所持人であるAが、裏書によってBに手がを譲渡する場合、A(裏書人=譲渡人)が振出人に対して持っている手形金を請求する権利はB(被裏書人=譲受人)に移転します。
 手形を譲り受けた人は、その手形を呈示して支払を受けてもよいし、さらにその手形を他人に譲り渡すこともできます。

2. 担保的効力

 裏書をして手形を譲り渡した人は、万一その手形が振出人の倒産などにより不渡りになったときは、譲渡した相手方(被裏書人)およびそれ以後の手形所持人に対して手形金を支払う義務を負います。これが裏書人の「担保責任」と呼ばれるものです。
 手形は流通することを使命とするものですから、裏書人がその手形を譲渡した者に対して支払責任を負うことにより、はじめて手形が容易に流通されるわけです。

3. 資格授与的効力

 裏書が連続している手形の所持人は、その手形の適法な所持人と推定されます。つまり、裏書の連続している手形さえ見せれば、自分が手形上の正当な権利者であることを、別の証拠で証明する必要がないということです。

裏書の連続とは

 手形の所持人が手形上の権利を行使するには、第一裏書人から所持人まで裏書が連続していなければなりません。
 裏書が連続しているとは、受取人が第一裏書人になり、第一裏書の被裏書人が第二裏書人となり、第二裏書の被裏書人が第三裏書人となって所持人に譲渡している。というように手形の受取人から現在の所持人まで裏書がとぎれることなく続いていることをいいます。

 裏書の連続していない手形を所持人が銀行へ取立に出しても「裏書不備」を理由に支払を拒否されます。
裏書が連続しているか否かは、手形面の記載だけで形式的に判断されます。手形の記載面だけが連続していれば、たとえ中間に偽造の裏書や架空の人や会社の裏書があったとしても「裏書は連続している」とみなされます。一方、第一裏書の被裏書人と第二裏書の裏書人が実際に同一人物であっても、手形の記載名が別人であると思われるときは、裏書は連続していないとみなされます。(本名とペンネームのような場合)
「山本工業株式会社」と「山本工業KK」は連続しているとみなされます。
「川本三郎」と「川本産業株式会社 代表取締役 川本三郎」は連続していないものとされます。

 裏書が連続しているか判断がつきにくいものは受け取らないように注意することが大切です。

特殊な裏書

1. 取立委任裏書

 手形金の取立を取引銀行に依頼するため、銀行を被裏書人として裏書きすることを取立委任裏書といいます。この裏書では、「取立委任」「取立委任のため」などの取立委任文句を裏書の目的欄に記入します。
 この裏書によっては、通常の裏書の場合のように手形上の権利は被裏書人に移転せず、単に「手形上の権利を行使する代理権」が被裏書人(金融機関)に与えられることになります。つまり、取立委任裏書には、担保的効力、権利移転効力はありません。
 取立委任裏書の被裏書人は、その手形を他に譲渡できません。ただ、代理権を第三者に委任するために、さらに「取立委任裏書」をすることはできます。

2. 無担保裏書

 裏書欄に「無担保」あるいは「手形上の責を負わない」旨を記して裏書きするものです。
この裏書の場合は、裏書人は手形が不渡りになった場合でも被裏書人に対する支払義務(遡求義務)を負いません。実務的には、不渡りになった割引手形を銀行が割引依頼人に買戻させる場合に、この無担保裏書をして、その手形を返却します。

3. 裏書禁止裏書

 裏書人が裏書欄に「裏書禁止」と書くと、裏書禁止裏書となります。もし、裏書人が手形面にそのような記入をした場合は、その手形は裏書によって譲渡できなくなります。もっとも、この裏書禁止裏書があっても、裏書によって転々と流通させることはできますが、もしもその手形が不渡りになったときには、裏書禁止裏書をした裏書人は、自分の被裏書人に対しては償還義務を負うが、それ以降の被裏書人に対しては一切支払義務を負いません。

4. 戻裏書

 振出人や裏書人として、一つの手形に既に署名している人を被裏書人とする裏書を戻裏書といいます。
実務的には、割引手形が不渡りなどになった場合、銀行が手形を割引依頼人に返却するときに、この戻裏書の方法をとることになります。戻裏書では必ず無担保裏書をします。

 

裏書の抹消

 裏書は抹消できます。抹消した裏書は、裏書の連続の関係では、記載されていないものとなります。

 方法は、特に決まっていません。一般的には、裏書欄全体に斜線や横線を引いて抹消します。抹消のための捺印はなくてもかまいません。鉛筆で抹消しても有効とされています。しかし、裏書の捺印部分だけ抹消しても、署名がそのままであれば抹消したことにはなりません。
 また、裏書人は、被裏書人の氏名を抹消することもできます。抹消したままで、再び何も記載しないままだと、白地式裏書となります。

 いったん裏書により受け取った手がを返却するとき、裏書人を被裏書人として裏書きして手形を渡すのも一つの方法ですが、この場合、もし不渡りになったときは責任を負わなければなりません。そこで、裏書による責任を負わずに返却する方法として、裏書を抹消して返却するということが行われています。