手形の記載事項(必要的記載事項)

1. 金額

 金額は手形の最も重要な記載事項です。金額は「一定金額」を表示しなければなりません。銀行などでは手形の金額欄の取扱を次のような要領で取り決めています。

(1)「1,2,3・・・」のようにアラビア数字で金額を記載する場合は、チェックライターを用い、手書きで金額を記載する場合は、「壱、弐、参・・・」というように漢数字を用いて書きます。もし、アラビア数字で手書きした場合、金額欄記載方法相違の理由で不渡りにされます。

(2)チェックライター使用のときは、最初に「¥」、最後に「※」か「☆」を、手書きの場合は、最初に「金」、最後に「円也」を記載します。

(3)金額は、必ず「一定の金額」であること、たとえば「5万円又は6万円」とか「10万円以下」と一定しないものは無効です。

(4)金額が訂正されているものは無効です。

(5)間違いを避け、また変造を防止する意味で、金額欄外に金額を「複記」することがあります。この場合、法律上は両者の金額に相違があるときは、文字で記載した金額を、また、文字のみ、または数字のみで2箇所以上に記載された金額に相違があるときは、その中の最小金額を手形金額とします。
 しかし、銀行の取扱では、複記はしないよう手形用法できめているほか、「複記のいかんにかかわらず所定の金額欄に記載の金額によって支払う」ことになっており、実務上は金額欄に記載の金額によって取り扱うことになります。

2. 支払期日

 手形金額が支払われるべき日として手形上に記載された日を満期、満期日または支払期日といいます。統一手形用紙には支払期日と印刷されています。
 支払期日の定め方は、(1)確定日払い、(2)一覧払い、(3)一覧後定期払い、(4)日付後定期払い、などもありますが、大部分の手形は特定の日を満期とする確定日払いです。統一手形用紙も確定日払いの方式を取っています。

 支払期日は暦に実在する日を書くべきですが、4月31日、9月31日など暦にない日を書いた場合には、その月の末日を表示したものとみなし有効な手形として取り扱われます。

 支払期日は日曜、祭日でもかまいません。その場合は翌日が満期日となります。支払期日は振出日と同一であっても、振出日から10年後でも差し支えありません。振出日より前の日を書くと無効となります。

 分割払手形(平成15年5月31日から平成20年4月30日まで毎月末日払い。といった記載)は無効です。

3. 受取人

 手形金額の支払を受ける者です。統一手形用紙では、金額欄の上部に「・・・・・殿」と印刷してあるところが、受取人の名称を記載するところです。住所を記載する必要はありません。氏名は、通称やペンネームでもかまいません。受取人が法人の場合は、会社名(商号)を記載し、代表取者を記載する必要はありません。会社の種類の表示は、株式会社、(株)、KK、などいずれでも差し支えありません。受取人が明確であればよいとされます。

 受取人として、「〇〇株式会社または何某何某」と二人以上記載されていても有効です。また、受取人欄が空白のまま振り出された手形は、受取人白地手形として有効です。

4. 振出日、振出地

 手形上に記載された日付が振出日です。振出日は実際に手形が振り出された日を記入しますが、たとえ実際に振り出された日と違った日付が記載されたも手形の効力はなくなりません。ただし、暦に実際にない日付、「2月30日」「4月31日」などを記載した手形は無効であるとするのが判例の大勢です。
 また、振出日が支払期日より後になっている手形は無効です。振出日は必要的記載事項ですが、振出日の記載のない手形でも実務上は当座勘定規定により支払がされています。

 振出地は、統一手形用紙では、振出人の住所を記載し、振出地は省略されています。振出地は最小独立行政区画(市町村、東京都の場合は区)まで書けばよいことになっています。実際に振り出した土地と関係のない場所を書いても手形の効力に影響はありません。ただし、振出地も振出人の住所も記載のない手形は無効です。

5. 振出人の署名

 手形には振出人の署名が必要です。署名のない手形は無効です。署名の方法は個人と法人では異なります。

個人の場合
 自分の氏名を署名し捺印するか、記名・捺印します。手形法では、署名すれば捺印がなくても有効です。しかし、実務上は署名してあっても銀行への届印の押印がなければ銀行は支払いません。銀行は手形の印鑑と届印の印影を照合し、偽造手形の判別をしているからです。
 捺印の位置は、氏名の末尾に続けてします。氏名に多少かかってもかまいませんが、氏名と離れ過ぎているものはだめです。捺印は、必ず銀行への届印でします。

法人の場合
 法人の場合は、「商号」「代表者の肩書」「代表者個人の氏名」を。必ず書かねばなりません。
 法人の振り出す手形に署名・記名する代表者の氏名及び使用する印鑑は、あらかじめ支払銀行に届出ておく必要があります。銀行は届け出た代表者氏名の記載と印鑑のある手形でないと支払いません。

 会社の場合、手形を振り出せるのは代表取締役ですが、あらかじめ支払銀行に手形の振出について、経理部長や支店長を会社の代理人とすることを届けておけば、経理部長あるいは支店長の名前で手形の振出ができます。

 なお、会社名義の手形を代表取締役以外の取締役などが振り出した場合、第三者からみて通常、手形を振り出す権限を持っているとみられる立場の者が手形を振り出しているときは、社内的には手形振出の権限を与えていない場合でも、善意の第三者に対しては、会社は手形を支払う責任があるものとされます。

「共同振出」
 共同振出とは、振出人が二人以上いることです。振出人の数に制限はなく何人でもかまいません。最初の振出人が振出人欄に記名・捺印したあと、次の振出人が、となりに「振出人」と注記して記名・捺印します。手形に書き切れずに補箋をつけてそれに署名・押印したものは有効な振出ではありません。また、共同振出人とも保証人とも記載しないで記名・捺印を並べた場合は後者は振出人の保証人とみなされます。

「共同振出人の責任関係」
 共同振出人は。各人がそれぞれ独立して手形を振り出したものとして取り扱われ、独立して手形金額を支払わなければなりません。つまり共同振出人は共同責任を問われ、手形の所持人は共同振出人のそれぞれに手形金額の全額を請求することができます。

6. 支払地、支払場所

 銀行から渡される統一手形用紙の場合、支払地、支払場所(銀行の支店名等)は印刷されていますので記入する必要はありません。

7. 収入印紙

 手形には収入印紙を貼らなければなりません。貼る収入印紙の額は手形金額によって決まっています。収入印紙が貼ってなくても手形の効力には影響はありませんが、印紙税法上の脱税となります。
 印紙を貼る義務を負うのは振出人です。印紙を貼って消印します。印紙を貼らなかった場合は貼るべき印紙の額の3倍の金額、また、消印しなかった場合は、貼った印紙と同額の過怠税が徴求されます。

 

「手形保証」

 手形保証の方法は、手形または補箋に「保証」あるいは「保証人」と書いて記名・捺印します。保証は誰のためにするか表示するのが建前ですが、振出人の氏名に並べて書けば、その者のために保証したものとされます。
 手形保証は、手形金額の一部について保証することもできます。その場合は「上記金額のうち、金何万円に限り振出人のために保証します。」と注記して記名・捺印します。

手形保証の効力
 手形保証した人は、被保証人と同一の責任を負います。振出人のため保証した場合は振出人と同一の責任を負い、裏書人のために保証した場合は裏書人と同一の責任を負います。この責任は「手形上の債務」に限られます。

 手形保証をしてもそれを生ずるもととなる手形行為(振出、裏書、引受)が定められた形式になっていない場合は手形が無効になるのと同じく、保証も無効になる。
 ところが反対に、手形が形式上有効に振り出されると、振出、保証の原因となった被保証債務が無効となっても保証の義務は無くなりません。例えば、偽造の約束手形や実在しない会社が振り出した手形でも、その事実を知らないで保証した場合などは有効な保証とされます。偽造であれば、振出人は支払義務は無くなりますが、保証人だけが支払義務を負うことになります。これを「手形保証に独立性」と言います。
 しかも、保証人は、手形金の支払を手形所持人から請求された場合、まず主債務者(被保証人)に催告するよう要求する権利を持ちません。つまり、催告の抗弁権を持ちません。保証人が一人でなく数人で共同して保証した場合、各保証人が手形金額の全額について責任を負うことになります。

「隠れた手形保証」
 手形上に保証人の記名・捺印があると、いかにも振出人に信用がないことを印象づけることになり、取り引き上好ましくないということで、裏書形式の保証が多くとられています。手形の保証人も裏書人も、手形の不渡りのときには支払義務を負うわけですから、保証人として手形面に署名してもらうかわりに、裏書をしてもらっても効果は同じです。この裏書によって実質的に保証の目的を達しようとうする方法を「隠れた手形保証」といいます。

 

「白地手形(しらじてがた)」

 白地手形とは

 手形法上は、必要記載事項の一つでも欠けた手形は無効です。しかし実際には、手形要件の記載のない手形が流通しています。
 手形を振り出すに当たり、いろいろな理由で、振出人の署名以外の手形要件の全部または一部を記入しないままで、あとで受取人に補充してもらう約束で受取人に渡す手形を白地手形と言います。
 白地手形は不完全な手形ですが、効力のある手形です。白地手形といっても、金額や支払期日が白地のものはめったにありません。振出人にとって非常に危険だからです。白地手形で多いのは、振出日が白地のものと、受取人が白地のものです。受取人を白地にしておくと、手形を受け取った人は、裏書によらず、そのまま第三者に譲渡することができるメリットがあります。

白地手形の取立

 白地手形は白地の部分が補充されてはじめて完全な手形となります。手形金の請求をするには、白地手形の所持人は白地手形の補充をしなけてばなりません。白地手形を受け取った人は誰でも補充できます。白地手形をもらった人は、白地部分を補充してから他に譲渡することもできますし、そのまま次の人に譲渡することもできます。