手形の不渡りとその後
不渡手形の処置について
手形の不渡りと返還
支払のために手形を呈示したが支払銀行でその支払を拒絶された場合、これを手形の不渡り、その手形を不渡手形といいます。
各銀行では、手形交換所から持ち帰った手形は、支払人ごとにわけて、それぞれの当座勘定から引き落としをするわけですが、そのとき、当座取引がないとか、支払人の預金が不足するような場合は、その手形を持出銀行へ返還することになります。
この不渡手形の返還方法と返還時限は、各地に交換規則においてそれぞれ定められていますが、通常、次の3通りの方法により行われます
1 手形交換当日の営業時限までに、持出銀行へ直接に店頭返還する。
2 翌営業日の持出手形といっしょに、手形交換所経由で返還する。
3 翌営業日の一定時刻までに、その手形が持ち出された銀行へ直接に店頭返還する。
不渡返還の手続
交換呈示をうけた手形のうち、支払のできないものがあるときは、支払銀行は手形にその理由を付して、不渡宣言します。また、「形式不備」「裏書不備」など適法な呈示でないことを理由とする不渡を除き、必ず不渡届を作成しなければなりません。この不渡届には、第1号不渡届、第2号不渡届があり、不渡事由によってそのいずれかを区別して用いることになっています。
不渡宣言の方式
不渡付箋に支払を拒絶する旨とその理由を記載し、それを手形表面にはりつけます。
例
「この手形は本日呈示されましたが資金不足につき支払いたしかねます。」
「この手形は本日呈示されましたが取引なしにつき支払いたしかねます。」
不渡事由
不渡事由は交換規則によって限定的に定められています。それには次の3種類があります。
第1号不渡事由
1 資金不足
イ 手形の金額が当座預金の残高よりも多い場合
ロ 当座勘定残高はあるが、その中にはまだ資金化されていない他店券(他の銀行を支払場所とする手形、小切手など)が含まれている場合
ハ 当座貸越契約があるが、その貸越限度額より手形の金額が多い場合
2 取引なし
イ 支払銀行と当座勘定取引がない場合
ロ 以前は当座勘定取引があっても、手形が支払呈示れたときに解約済みである場合
第2号不渡事由
1 契約不履行
たとえば、甲が乙に対して建築請負代金の一部を前渡しとして手形で支払ったところ、乙が契約通りの仕事をしない場合、甲は契約不履行を理由にこの手形の支払を拒絶できます。
2 詐欺
3 紛失
4 盗難
5 偽造
6 変造
7 印鑑相違
押してある印鑑が銀行への届出印と異なる場合
8 金額欄記載方法相違
金額欄にアラビア数字をチェックライター以外のもので記入してある場合
9 約定用紙相違
銀行が交付した所定の手形用紙以外の用紙を使用した場合
不渡届の対象とならないもの(0号不渡事由)
1 形式不備
振出日および受取人以外の手形要件が手形の表面に記載されていない場合
2 裏書不備
裏書に必要な要件が裏書欄に記載されていない場合
3 呈示期間経過後
4 期日未到来
5 案内未着
6 依頼返却
7 該当店舗なし
8 会社更生法による財産保全処分中
不渡届
第1号不渡届、第2号不渡届とも支払銀行が作成します。ただし、不渡事由が重複する場合は、以下の取扱いとなります。
0号不渡事由と第1号または第2号不渡事由とが重複する場合は、0号不渡事由が優先し、不渡届は提出されません。
第1号不渡事由と第2号不渡事由とが重複する場合は、第1号不渡事由が優先し、第1号不渡届が提出されます。ただし、例外として第1号不渡事由と偽造又は変造とが重複する場合は、第2号不渡届を提出することになっています。
不渡り発生から取引停止処分まで
不渡りを出すとどうなるか
手形の振出人が、正当な事由なしに支払をしなかった、つまり不渡りにしたときには取引停止処分になります。
この「取引停止処分」というのは、不渡を出した者は、その手形交換所に加盟しているすべての銀行と、処分通知から向こう2年間、当座勘定取引や貸出しの取引を禁止するというものです。
取引停止処分をうけると、その会社は、どの銀行とも取引できず、手形や小切手を振出すことはできなくなり、円滑な商売はできなくなります。
不渡の手続
手形交換所は、支払銀行と持出銀行から提出された不渡届を確認し、支払人に対する制裁措置をとります。
不渡届は、第1号不渡事由の対象となる不渡事由のときも、第2号不渡事由の対象となる不渡事由のときも提出しなければなりませんが、支払人の信用に関する不渡りである第1号不渡事由のときは、振出人は不渡届に対して異議申立が認められないのに対して、第2号不渡事由のときは異議申立が認められています。
「不渡報告」への掲載
1回目の不渡がでると、手形交換所はそのことを「不渡報告」に掲載し、加盟銀行に通知します。これは取引停止処分の第1段階で、その手形交換所に参加している全銀行に対して不渡りの発生を通知し、その後の取引について注意するよう警告するものです。
不渡報告に掲載されると、要注意人物(企業)としてマークされ、商取引については制約されることになりますが、法律的、制度的には、それまで通り当座取引、貸付取引をすすめることができます。
取引停止処分の決定
不渡りを出し、不渡報告に掲載された者が、それから6ヵ月以内に2回目の不渡を出すと「取引停止処分」になります。
手形交換所は、「取引停止報告」にその名前を掲載し、加盟銀行に通知します。取引停止処分を受けた者は、通知日から向こう2年間、加盟銀行と当座取引および貸出しの取引をすることができません。
1回目の不渡りを出して不渡報告へ掲載されてから、6ヵ月間に不渡りを出さなければ、最初の不渡報告の効力は自動的になくなり、その後、もし再び不渡を出しても、それは1回目の不渡りとして取り扱われます。
この場合の6ヵ月の期間とは、正確には、第1回の不渡手形の交換日(不渡届の日付)から記算して6ヵ月後の応答日の前日までをいいます。
たとえば、第1回の不渡手形の交換日が3月20日であれば、9月19日までということになります。従って、1回目の不渡りが3月20日で2回目の不渡りが9月20日だとすると、最初の不渡報告の効力は消滅し、改めて1回目の不渡りとして不渡報告へ掲載され、取引停止処分にはなりません。
不渡届に対する異議申立
異議申立とは
不渡届に対し、「支払を拒否したのは、資金がないためではなく、支払を拒絶するだけの正当な理由があるからだ」と主張して、手形金額と同額の金額を提供して不渡処分の猶予を求めるのが「異議申立」の制度です。
異議申立の手続
支払銀行は、不渡りにした手形を持出銀行に返却するとき、手形振出人に異議申立をするかどうか確認します。
この異議申立ができるのは、第2号不渡届に該当する不渡事由、つまり「契約不履行」「詐欺」「盗難」などの場合で、特に「契約不履行」を理由とするものが大部分です。
「資金不足」「取引なし」を理由とする不渡りについては、異議申立はできません。
振出人が異議申立を依頼した場合には、不渡手形と同額の現金を支払銀行に預けます。このお金を「異議申立預託金」といいます。
異議申立を依頼された銀行は預託金が預けられたことを確認したうえで、手形を不渡にした日(交換日)の翌々日の営業時間中に、異議申立書と現金を手形交換所に提出します。この手形交換所に提出するお金を「異議申立提供金」といいます。このようにしておけば、支払人は不渡処分を免れるわけです。
このように異議申立のために手形交換所にお金を預けるのは、支払銀行自身であって、支払銀行が振出人の代理人として預けるのではありません。従って、後日、手形交換所から異議申立提供金を返してもらうのは支払銀行で、振出人に預託金が戻るのは、手形交換所から支払銀行に提供金が戻されてからということになります。
異議申立提供金の返還
手形交換所に提出した異議申立提供金が支払銀行に返還されるの次の場合です。
1 不渡事故が解消した場合
手形所持人と振出人との間で話がついて、手形交換所に積んだ提供金を取り下げたいときは、持出銀行が不渡事故解消届を出すことになります。
2 別口の不渡が出て、取引停止処分が決定した場合
処分を免れるための異議申立が無意味になる。
3 不渡事故は未解決でも、振出人が取引停止処分をうけるのはやむを得ないとして、支払銀行が異議申立の取下を請求した場合
4 異議申立日から2年経過した場合
取引停止処分は2年たつと解除されるので、提供金も2年たつと無条件で返還されます。
5 手形振出人が死亡した場合
6 手形の支払義務のないことが裁判などにより確定した場合
異議申立後に、偽造、変造、盗難という主張が手形交換所に認められた場合は、振出人が被害にあったわけですから、特別に提供金は返還されます。
事故手形の場合の異議申立提供金
異議申立にあたっては、手形交換所に手形金額と同額の現金を積まなければなりませんが、不渡の理由が手形事故の場合は、特別の取扱いが認められています。
偽造、変造の場合
「偽造」「変造」の場合は、お金を積まなくてもよいこになっています。もっともそのためには、異議申立にあたり、その手形が偽造または変造されたものであることを証明する資料を添付する必要があります。
盗難、紛失、詐欺、取締役会承認等不存在の場合
「盗難」「紛失」「詐欺」「取締役会承認等不存在」を理由とする不渡りの場合は、いったんは提供金を積む必要があります。
そして、後日、その事実を証明する資料を手形交換所に提出し、手形交換所がその主張を認めた場合は提供金を返還してくれます。